おかやんの活動記録

マイクロマウスやmatlabのお話など、日々の活動を記録していきます。

光造形3Dプリンタでマイクロマウスの部品を作ってみた。

こんにちは、おかやんです。

先日、自宅に光造形の3Dプリンタを導入しました。
ここ最近はだいぶ手が出しやすい値段になってきた光造形で、 マイクロマウスの部品がつくれたらQOLが上がるでは、という勢いが動機です。

結果からいうと、マイクロマウスの機械部品製作に光造形は向かない(主観)です。 今回はその結論に至った経緯をつらつらと書き残しておこうかなと思います。 実際のところ光造形どうなの、という方に届けば幸いです。

導入した光造形プリンタ

私が今回導入したのはElegoo marsです。
本日(20/3/9)時点で約3万円で購入することができます。実際には印刷に必要なレジンや、IPAなどを追加購入する必要がありますが、それでも合計4万円に届かないと思います。

mars写真

スペックは以下のようになっています。 数字だけ見ると、とても素晴らしいものだと感じます。

 
出力サイズ 120 x 68 x 155 mm
積層ピッチ 0.01mm ~
xy解像度 0.047mm
Z軸精度 0.00125mm

テストプリントしてみる。

marsの付属USBにはテストプリント用のデータが入っています。 下の写真はその出力結果です。とてもきれいに出力できています。 エッジもしっかりと出ていて、細部も再現されています。このテストプリント出力の瞬間が、光造形への期待値が最も高くなる瞬間となるのは、きっとあるある。

テストプリント結果

マウスの部品を作ってみる。

マウスの機械部品を出力してみます。 3DCADからSTLファイルを作成し、elegoo専用のスライス"CHITUBOX"でサポートを生成、スライスします。この灰色の木の枝のようなものがサポートです。これが結構曲者で…後述します。

CHITUBOX作業風景

出力し、サポートをぶちぶちと取り除いた結果がこちら。(上の画像の出力結果とは異なります。) ・・・きたないですね。とくにサポートがついていた面が汚いです。 寸法精度もよろしくないです。例えば右の穴はΦ6のモータを圧入するための穴なのですが、 設計Φ6→出力Φ5.6となっており、だいぶ小さく出力されています。 真円度も目視で楕円状になっているため高そうです。(高いほうが真円から遠いです。)

サポートが付かなかった面はきれいに出力されています。

なぜサポートがついていた面は汚くなるのか。なぜ寸法より縮んで出力されてしまうのか。簡単に考察していきます。

光造形の仕組み

考察に入る前に、簡単に光造形の仕組みを紹介します。
光造形の仕組みは以下の画像のようになっています。 UVライトから発せられる紫外線を、液晶によって硬化させたい部分だけ透過さえ、 レジンを硬化させます。硬化後、プラットフォームを上昇させ、次の層を作ります。 この手順の性質から、プラットフォームに固着していない箇所から造形を始めるのは不可能です。 そのため、造形箇所までのサポートが必要になります。

なぜサポート面はきたなくなるのか

限定的な形状を除き、サポートは必須です。そのサポートが付いていた面はなぜ汚くなるのか。 一番の大きな理由は下図のような造形不可領域の存在だと考えています。 光造形は先の仕組みから、硬化する面積が急に増えることには対応できません。 硬化する面積が急に増えると、硬化している点の部分にぶら下がるような形になり、 だれる原因となってしまいます。一般的に、プラットフォームに対し水平であればあるほどサポートの周りがだれてしまいます。そのため、造形箇所はだんだんと広がるように構造物、サポートを設置するとよいのですが、形状によってはそれが難しい箇所がでてきます。サポートを工夫するより、造形しやすい形状を考えるほうが簡単かもしれません。

プラットフォームと平行に設置したけっか、大きくだれてしまった天面

なぜ縮むのか

こちらは簡単です。レジンは硬化する際、縮む特性を持っています。 そのため、液晶で透過させる範囲から、少しだけ縮みながら硬化します。 縮み方はおそらくその時々の条件で変化するため、設計でフォローしようというのはなかなか難しそうです…

光造形はなしなのか

ここまで、光造形の悪い点が目立つ書き方をしてきましたが、いい点ももちろんあります。

  • 研磨性の良さ
    これはつまり削りによるリワークが可能ということです。余り厳密な精度がいらない箇所では、少し設計にゆとりを持たせ、削りながら調整、ということが可能です。

  • 表面の滑らかさ
    光造形の一番の強みはここではないでしょうか。熱溶解積層と比較すればその滑らかさは圧倒的です。

まとめ

ここまでつらつらと書きましたが、いかがでしたでしょうか。
端的にまとめると、光造形3Dプリンタは

  • 精度が必要ない。
  • ディティール形状を再現したい。
  • 表面の滑らかさを重視したい。

といった目的だと素晴らしい結果を残してくれそうです。
あくまで"mars"を使ってみたうえでの主観ですが。もっと高い機種だとと違うのかな。

であればマイクロマウスの部品は何で作るのがいいのか。というと現状はDMM.makeのアクリル一択な気がします。ただ残念なことに20年度で一度なくなってしまうみたいです。 復活はいつになるのか・・・。マウサーにとっては死活問題なのではとおもいますが、皆さんが考えている代替案を知りたいです。

最後にサンプル出力の形状をみてみますと、土台から先細りの形状で、サポートが必要なく、一番きれいな面がでる最上部にエッジが特徴的な形状を配置しており、出力品がきれいに見える工夫があるなあと感じました。商売がうまいなぁ。

実際に光造形で精度が必要な部品を作られている方がいましたら、 そのノウハウを教えていただきたいです…。

記事内容にご意見ご批判等ありましたら遠慮なくお願いします。 それではまた。